在宅での医療

在宅医療とは、具合が悪くなったときだけ医師が診療に伺うものではありません、お一人で通院が困難な患者さんのお宅に、日ごろから医師が定期的に診療にお伺いし、計画的に健康管理を行うものです。

定期訪問に加え、緊急時には365日×24時間体制で対応、必要に応じて臨時往診や入院先の手配などを行います。在宅診療の目的は病気の治療だけではありません。転倒や寝たきりの予防、肺炎や褥瘡などの予防、栄養状態の管理など、予測されるリスクを回避し、入院が必要な状態を未然に防ぐことも重要な役割です。

わたしたちは地域の病院や介護事業者の方々と連携・協力しながら、患者さんが在宅で安心して療養生活を続けられるよう、総合的にサポートしています。

在宅医療とは
どのような医療なのか

在宅医療は、「ものがたり」に基づく医療ですので、患者さんやご家族のお話をじっくり聞くことが基本です。1件あたり15~30分、初診の患者さんの場合には1時間以上かけてゆっくりとお話をうかがうこともあります。

何度かお伺いしていると、お互いに徐々に打ち解け、体調以外のお話ができることもあります。若いころの思い出、ご家族のこと、個人的な悩み…そのようなお話もすべて患者様の「ものがたり」の一部です。

このゆったりとした問診を除けば、あとは視診・聴診・触診・打診など、病院での診療と内容は大きく変わりません。変化に気づいていない人も多いので、訪問診療では基本的に毎回全身を診察し、体温、血圧、脈拍等の測定を行います。

在宅医療によって
不用な入院を防ぐ

入院治療は命を守るための最後の砦です。非常に重要な医療ですが、脆弱な高齢者にとっては、入院治療そのものがリスクでもあります。

入院治療の侵襲や入院による環境変化のストレスは、在宅患者の身体機能・認知機能を低下させる危険もあります(入院関連機能障害)。予防的な医学管理(発症予防/早期発見・早期治療)を通じて、入院が必要な事態を最小限に抑えること、そして入院になったら1日も早く退院できるように支援すること。これは在宅医療の主たる使命の1つだと考えます。

在宅医療導入前と比較すると
大幅な入院減に

大幅な入院減 大幅な入院減


上記は、あくまで在宅医療導入後の入院回数・入院日数の年次変化を検討したものです。在宅医療導入前と比較した場合には、おそらく相応の入院リスクの軽減ができているものと推測されます。わたしたちが在宅療養支援を担当している患者さんは、在宅医療導入前に1人あたり年間平均延べ41.2日入院されていますが、在宅医療導入後は、年間平均11.5日と大幅に減少しています。

在宅医療が機能することで、入院を大幅に減らせていると考えてもよいかもしれません。これにより、入院関連機能障害から患者さんの身体機能・認知機能を守り、患者さんがご自宅や施設で穏やかに過ごせる時間を確保できていたということになります。


在宅医療導入前と比較 在宅医療導入前と比較


6,500人の患者さんが年間30日入院依存を減らしたと仮定すると、延べ195,000日分の入院を削減したことになります。これは、入院医療費にして約60億円分。医療資源や社会保障費の適正利用化にもつながっている可能性があります。

わたしたちが行っている在宅医療は、患者さんだけではなく、医療機関や医療従事者の未来につながる医療でもあるのです。